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日本オミックス医療学会 シンポジウム「ゲノム編集に基づく医療の到来」開催

  • 執筆者の写真: SystemsBioMedicine TMDU
    SystemsBioMedicine TMDU
  • 2018年5月16日
  • 読了時間: 4分

開催日:2018年5月18日(金)12:30~16:30
会場:東京医科歯科大学M&Dタワー2F共用講義室1

タイトル:『ゲノム編集技術によって初めて露わにされる生命科学』

抄録:ゲノム編集技術は、いよいよ、究極の遺伝子治療を目指した医療にも応用されつつある。さらに、クロマチンのダイナミズムの解析やクロマチン修飾の誘導など、遺伝子編集に留まらず、種々の医学研究への応用が盛んに行われている。中でも、ゲノム編集技術の大きな成果として、ES細胞を用いた従来の遺伝子プログラムを書き換える手法では困難であった対象も、TALENやCRISPRを用いた遺伝子編集技術の応用で、初めて自在に遺伝子を書き換えることができるようになり、結果、医学・生物学に大きな進展をもたらしている。例えば、腱の研究において、マウスより大型のラットを用いた研究は生理学的、分子生物学的解析に必要であるが、ノックアウトラットの作成は困難を伴っていた。我々は、転写因子の発現データベースEMBRYSを作成(Yokoyama, Dev Cell 2009)、腱のマスター転写因子Mkxを同定したが(Ito, PNAS 2010)、詳細な解析にはノックアウトラットの作成を必要としていた。今回、CRISPR/Cas9を用いたMkxノックアウトラットの作成によって、Mkxの生理学的な機能を明らかにすることができた(Suzuki, PNAS 2017)。

また、Y染色体などの高度なリピート配列をもつ遺伝子の改変は困難であったが、TALENやCRISPR/Cas9を用いた遺伝子編集で、効率よくダブルノックアウトまで作成することに成功し、結果、Sry, Eif2s3y, Zfyという3つの遺伝子の性分化、精子形成における必須の枠割りを解析、証明することに成功した(Kato, Sci Rep 2013, Matsubara, Stem Cell Dev 2015, Nakasuji, PloS Genet 2017)。さらに、イントロンにコードされるマイクロRNAとそのHost遺伝子との関係を、それぞれの遺伝子を別々に切りだすことに成功、驚いたことに、我々が発表していたmiR-140(Miyaki, Gene Dev 2010)は頭蓋骨形成に必須であることを再確認できたものの、Host遺伝子側は頭蓋骨形成には必須でないということを見出した(Inui, Nat Cell Biol 2018)。この結果は、今まで報告されたGene Trapでのノックアウトマウスの解析結果に警鐘をならす世界で最初の報告となった。今後もゲノム編集技術により、益々加速的に、生命科学が露わにされることが期待される。

開催趣旨

新しい遺伝子改変技術であるゲノム編集は、30億塩基対に及ぶヒトゲノムの特定の部位に、目標遺伝子の導入、遺伝子変異の修復、欠失・挿入を可能にした。 その正確性のゆえに、不幸な事故によって停滞していた従来の遺伝子組換え法を乗り越え、今日、新規のエイズ治療、がん治療など、ゲノム編集技術を用いた様々な疾患に対する遺伝子治療が世界の各地で開発され、また治験が進行しつつあり、一部が既に臨床応用段階に入っている。ゲノム編集の臨床医学応用が、次世代シーケンサが齎したゲノム診断の高精度化、すなわち精密診断医学(precision medicine)の到来に対応し、それに双対(dual)な精密治療医学(precision therapeutic medicine)という治療医学を革新するパラダイム変換を引き起こしうるのか、本シンポジウムではゲノム編集の可能性・臨床医学への展望を議論する。

PROGRAM

12:30 開会挨拶 田中 博 氏 日本オミックス医療学会 理事長/東京医科歯科大学 名誉教授、東北大学 特任教授東北メディカル・メガバンク機構 機構長特別補佐 ご来賓挨拶 佐原 康之 氏 厚生労働省 大臣官房審議官(科学技術・イノベーション、がん対策担当) 菱山 豊 氏 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 理事

〖ゲノム編集に基づく医療の到来〗 座長:岡崎 康司 氏 順天堂大学大学院 医学研究科 教授/難病の診断と治療研究センター センター長 12:50~13:30 講演I『ゲノムの光操作技術の創出』 佐藤 守俊 氏 東京大学大学院総合文化研究科 教授 13:30~14:10 講演2『ゲノム編集からエピゲノム編集へ』 畑田 出穂 氏 群馬大学・生体調節研究所ゲノム科学リソース分野 教授 14:10~14:30 コーヒーブレーク 座長:村松 正明 氏 東京医科歯科大学難治疾患研究所 ゲノム応用医学研究部門 教授 14:30~15:10 講演3『ゲノム編集技術によって初めて露わにされる生命科学』 浅原 弘嗣 氏 東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 システム発生・再生医学分野 教授 15:10~15:50 講演4『ゲノム編集の医療と疾患モデルへの応用』 岡野 栄之 氏 慶應義塾学大学院医学研究科委員長/慶應義塾大学医学部生理学教室 教授

15:50~16:30 〖パネルディスカッション〗 チェアマン:田中 博 氏 日本オミックス医療学会 理事長 パネリスト:登壇者

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